ゲームデザイナーGARY GYGAXの生涯と、彼の最大の作品にして世界初のテーブルトークRPGとなった"DUNGEONS and DRAGONS"の誕生を描いた伝記。
前書きにもあるように、ウォルト・ディズニーやスティーブ・ジョブズほどに有名でもなければ、社会的に大成功したともいえないけれど、現在の文化に影響を与えた功績でいえばあまたの偉人に勝るとも劣らない人物。全てを作り、全てを奪われた男。
人物史や経営史としての側面が強いので、純粋なゲームファンが読んでも楽しめる部分は少ないかもしれないけれど、ゲイリーが二人の子供と最初のテストプレイを行う描写はこの上なく美しいし、想像力が世界を作り出す過程も興味深い。
ナードらしいダメ要素をことごとく兼ね備えたゲイリーだけれど、一つ、見習うべきと思ったのは「書く気が起きたら後回しにしない」ポリシー。僕も今まで知りたいことや読みたい本については「どんな状況でも後回しにしない」というのをポリシーとしてきたけど、そろそろ出力を重視しなければいけないと思う。
「ミューズがやってきたら、すごい勢いでやってしまわなければいけない」のだ。
『最初のRPGを作った男ゲイリー・ガイギャックス〜想像力の帝国〜』マイケル・ウィットワー (著), 加藤 諒 (編集), 柳田真坂樹 (翻訳), 桂令夫 (翻訳)
2016/6/30
P.S.
ジョブズやノーベル賞を受賞した研究者を引き合いに出して、日本ではクリエイターが報われない社会だということが問題視されることがあるけど、この手の伝記物の常として、ゲイリーの後半生が不毛なマネーゲームや法廷闘争に費やされているのを読むと考えさせれるものがあった。
偉大な創造主の制作の機会が奪われただけでなく、TSR社が市場にライバル商品を増やさないという戦略の為だけに後発商品の版権を買い取り、飼い殺しのまま死蔵させてきたこと(その中には追放されたゲイリーの作品も含まれる)はアメリカ文化の大きな損失だったと思う。
http://clarklog.seesaa.net/article/456355457.htmlGARY GYGAX and the Birth of DUNGEONS and DRAGONS
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