デザイン関係を何冊か借りたのだけど、「あたらしいみかんのむきかた」という絵本に興味を惹かれた。
みかんが好きすぎてありきたりな剥き方に飽き飽きした「むきお」少年が新しいみかんの剥き方を試行錯誤していく、という絵本の物語もエキセントリックで楽しいのだけど、ミカンの皮を余すところなく使って何かを表現するという点が、アートと数学的思考の両方を必要としていてとても面白いと思う。
そう、特に明記してあるわけじゃないけれど、折り紙を作るときにハサミや糊を使わないという「お約束」があるのと同様、この剥き方も蜜柑に切れ目を入れたら一筆書きで一気に切り開き、要らない部分を切り取ったりしないという「お約束」でデザインされているのだ。
あたらしいみかんのむきかた
あたらしいみかんのむきかた 2
緯度経度座標を描いた幾つかの基本的な展開図を元に、この部分をこちらへと切り張りして移動していけばある程度の形は作れそうな気もするけど、それでも馬や牛といった複雑なデザインを描くまでには膨大な試行錯誤があったのだろうとも思う。そもそも蜜柑は完全な球体ではなく、個体差の影響は実際に切り開いてみるまで分からないし、ヘタの部分が動物の目だったり、デザイン上のアクセントになっている点もポイント。
まあ、だからなんだという話でもある。
AMAZONのレビューを見ると、子供の工作のために買ったけど実際やってみると切るのが難しかったといった感想が多いけど、むしろ、自分で新しい剥き方を考案することこそ、創造性や幾何学的想像力を育むことになるのではないか。
世界遺産となったシドニー・オペラハウスもオレンジの皮をむいているときにデザインを思いついたというし、「着目する力」というのも大切な能力だと思う。